『秘密の花園』-月の草-3- 

2016, 10. 06 (Thu) 18:25

 日付が変わる直前にお届けできる・・・かな。

 ええと、やはりというか結局と言うか。
 東京でこっそり楽しんだツケを今払っているとしか思えない事態になっています。
 たった数日前のことなのに、遠いわ・・・。
 まあ、ずっと以前にお年寄りのお茶会のお世話をしていた時に色々見てきたので、想定内と言えば想定内。
 ただね・・・。
 昨晩思い切って様子を見に行かなかったら、大事になっている所でした…。
 いや、今も色々大変なんだけど。
 各方面言いたいことはたくさんあるけれど、ネットで叫んでも仕方ないので、とりあえず、自分にできることを後悔のないようにしたいと思います。
 
  さて。
 『秘密の花園』-月の草-3-。
 少しでも楽しんでいただけたら、こちらとしては励みになります。
 リアルがどんなことになっていても、書くことだけはやめたくないなーと、思います。
 ではでは、父と次男の対決、ご覧ください。


真神家相関図12



  記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
 もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。


ブログランキング・にほんブログ村へ


   拍手小話はこちら →



『秘密の花園』―月草― -3-



「それで、お前が引き継いだのか」
「はい。隠し財産の、そもそもの目的も聞かされていたので。当時の俺は、ばかばかしいと思ったのですが」
「ばかばかしい?」
「ええ。だって、どこかの国の広大な土地を買って、母さんと、清乃と、俺、そして勝巳と暮らそうって、子供の夢のようなことを真剣な顔をして言ったんですよ、三十を過ぎた男が」
 はきすてるに言いながらも、唇に違う感情が漂っているように見えた。
「・・・真神と、私に関わりのない、どこかへ行こうとしていたのか、あれは」
「そうです」
「そうか・・・。そんなことを・・・」
 俊一が亡くなって以来、いや、それ以前から何度も見る、家族の夢。
 その中ではいつも、誰もが笑っていた。
 そうありたいと、彼らが願っていたと思うのは当たり前だろう。
「・・・もっと、驚くと思いました。随分と冷静なんですね」
「ああ・・・。驚いてはいるのだが。俊一は真神家の男であり、峰岸は長田家が育てあげた秘書だ。不思議はないと思ってな」
「・・・逆に、俺の方が驚かされっぱなしですよ、あなたの反応には」
「ああそうか。・・・それは、なかなか愉快だな」
「・・・なっ・・・っ」
「それで。今、これをわざわざ私に知らせるわけは?憲二」

 聞かずとも、憲二が現れた時点で解っていた。
 いや。
 昨日、この場所で、勝巳が無花果を差し出した時から、予感はあったのだ。
 近いうちに、真神の庭に、風が吹くと。
 それを見届けるのが、自分の役目なのだろう。
 罪滅ぼしには、決してならないが。

「これで、真神を買います。永久に」
 次に提示された書類の数値は、更に膨れ上がっていた。
「正確には真神本家の不動産全般。勇仁義兄さんの資産はもちろん全く興味ありません。政治家なんてまっぴらですから」
 いかにも憲二らしい言葉だと思った。
 憲二らしい?
 ふと思いなおして、笑いがこみ上げてきた。
「・・・何がおかしいのですか」
 憲二は、誰よりも子供らしい子供だったのだな、と、今更思う。
 そして、まだ子供のままの子供。
 純粋であるところ、頑固なところ、きかん気の強いところ。
 愛らしい子供が、ここにいる。
「・・・たしかにこれだけあれば、たとえ世界恐慌になったりお前たちが百歳近く生きたとしても、十分維持できるであろうな」
「なら、決定ですね」
「いや。そういうわけにはいかない」
「は?」
「昨日、勝巳が来て、ここをくれと言った。だから、やると約束した」
「ちょっと待ってください、それじゃあ勝巳は・・・」
「憲二」
「何ですか」
「その財産を隠し続けたのに今更なぜ私に知らせ、この庭を買うという」
「それは・・・」
 言葉を選びあぐねて、憲二は唇を開いては閉じた。
「言えないか?なら、その話はのめない。勝巳の願いを、私は叶えてやろうと思う」
「・・・っ!それじゃあ、あんたは、勝巳にあの女と結婚しろと!」
「ああ、そうだ」
「・・・あんたは、やっぱり、真神のことしか考えてないんだな。義兄さんの愛人の子にここを取られたくないんだろう、しょせん血のつながりはないからな!」

 清乃が生死をさまよいながら産んだ春彦は、生い立ちが大きく影を落として線の細い子に育った。世代交代するころに強力な後ろ盾がいない可能性を考えると、政治家にするにはかわいそうだと誰もが思っている。
 ところが勇仁が気まぐれに触れた銀座の花は野心に満ち、産んだ息子を政治家にするべくありとあらゆる謀略をめぐらせ、いずれは清乃たちを追い出す腹づもりを隠さない。
 気にかかることはいくらでもあるが、今は、まだ。

「真神のこれからは、どうにでもなると思っている」
「え・・・・」

『俺は、とても嬉しかった』
『とても、嬉しかったのです、お父さん』

 勝巳が収穫してきた、無花果の果実。
 あの甘さと舌触りの滑らかさは、きっといつまでも忘れないだろう。
 彼の、心のうちと同じく。

「私は今、勝巳のことを考えている。・・・だが。お前はどうなんだ?憲二」
「はい?」
「お前は、本当に、勝巳のことを考えて、今、ここにいるのか?」
 今の憲二は、まだ、幼いままだ。
 それでは、渡せない。
 勝巳を渡すことは、出来ない。
「そうだと言い切れないなら、私は、この庭をお前に任せることは出来ない」
「・・・なっ・・・!」
 顔色を変えた憲二がいきなり立ち上がると、引きずられた椅子が大きな音を立てた。
 傍の木にいたらしい小鳥たちが驚いたらしく、鋭い声を上げていっせいに飛び立つ。
 木々が揺れ、窓からさしこむ光が交錯した。





                  -つづく。-



スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント