『野分』-6-(刀剣乱舞二次創作) 

2016, 08. 10 (Wed) 15:02

 今はちょっと風邪気味です。
 たぶん、仕事で対応した子供のくしゃみを何度も顔面に受けたのと、多忙なせいだと・・思います。
 仕事も忙しいけど、それ以外がいろいろ。
 それなのに、この猛暑ときたら…。
 体力も確実に奪われて行くわ…。

 そんななか、どうしても先に進めたくて更新します。
 もう、メールチェック、Twitterチェック(主に猫画像チェック)の隙を見て数行ずつ書いたり入れ替えたりしています。
 ファンタジーであるけれど、二次創作なので、資料を見直したり。
 予定では十行足らずにしてしまうつもりだった、青龍の滝での山姥切の様子。
 あくまでも主人公は山姥切国広と言うことで、しっかり描くべきかもと思い返し、こうなりました。
 痛いし辛い場面ですが、読んでいただけると嬉しいです。

 刀剣乱舞をご存じない方のために、ちょっと説明しますね。
 これはニトロプラスとDMMで組んだオンラインゲームで、審神者、というのが私たちプレイヤーで、日本刀の付喪神たちを使役して歴史の改変をもくろむ敵と戦います。
 ちなみに私が主人公に据えている山姥切国広はゲーム開始の時にとりあえず選ぶ刀剣のうちの一つで(←すごい物言い・・)、一見ネズミ小僧のようななりをした(キャラクターデザインの方ごめんなさい・・・)、コンプレックスの塊の憑喪神です。
 最初、あんまりめんどくさい性格なのでうっちゃってしまおうと思ったけれど、この世界の刀剣男子全員こじらせていないヤツはほとんどいない・・・。
 こじらせスタンダードが、刀剣乱舞の極意です。

 山姥切国広の来歴は以下の通り。
 天正十八年。
 北条家に仕える長尾顕長が足利学校へ立ち寄った刀工・国広へある依頼をしました。
 それは、主君から拝領した『長義作・「山姥切」』の『写し』を作刀して欲しいと。
 そして生まれたのが、『山姥切国広』です。
 ちなみにこの後、有名な小田原開城にて国広とともに籠城していた長尾顕長は処罰を受け、領主の地位を追われます。
 さらに巡り巡って現在、『長義作山姥切』(こちらを「本科」と言います。徳川美術館所蔵)と『山姥切国広』(こちらは『写し』で個人蔵)という『山姥切』が存在するわけです。
 
 オンラインゲームの設定と、ネット上に公開されている刀剣資料を基に妄想を働かせて書きなぐっているのが、私の刀剣乱舞二次作品シリーズです。
 かなりオリジナルの色が濃くなってきていますが、楽しんでいただけると幸いです。

 




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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『野分』-6-



 ざああ・・・・。
 山から湧き出る命の源が、白く輝きながら深い緑の水面に向かって途切れることなく、一直線に降り注ぐ。
 あたりには清らかな空気が満ち、涼やかな風が吹いているはずだ。
 しかし、今の自分には何一つ感じられない。
「あつい・・・」
 地面をはいずりながら、山姥切国広はようやく目的の場所にたどり着いた。
 手のひらに当たるのは、滝を臨む岸壁のきわ。
 その先に広がるのは、底の見えない深い滝つぼだった。
 今、この周辺で生き物らしいものは自分だけだろう。
 地面に根を生やした植物は動くことができない。
 しかし、それ以外の足や羽を持つものたちは出来るだけこの場から遠ざかったはず。
 毒矢を受けて数刻。
 背に乗せた男が少しずつ違うものに変化していく気配を肌で感じ、恐怖を覚えながらも、小雲雀は耐えて青龍の滝を目指して駆けてくれた。
 途中、何度か足を止めさせようとしたが、けなげな名馬は必死になって聖域へと足を進め、ようやく諦めたのは人の力で登るしかない頑強な岩肌が立ちはだかってからだった。
 すっかり消耗しつくしたであろうに、小雲雀は心配げな瞳で何度か立ち止まり、振り返りながら城へ帰って行った。
 関わりを持ったのは短い間だったにもかかわらず、最善を尽くしてくれたことに頭が下がる。
「ありがとう・・・」
 一つ幸いだったのは、自分の体の中でうごめくモノが、獣には興味を示さず、憑りつかなかったことだ。
 うごめくモノ。
 自分を喰らい、汚し尽していっているモノ。
 地面に腹ばいになったまま、どんなに力を込めても震えてしまう指先を見つめる。
 震えるのは、信じられない光景を目にしているからなのか、それが毒の性質なのかわからない。
 毒矢を受けた太ももから次第に広がっていったのは、米粒ほどの小さな呪詛。
 前に山伏国広から見せてもらった経典に記されている梵字に似ているが、違うようにも見える。
 ただ、それらは傷口から虫のように湧いてじわじわと肌の中を蠢き、増殖し、まるで、自分の身体が経文になっていく錯覚に陥らせようとしていた。
 今も、謎の文字は蟻が獲物を運ぶほどの速さで動き続けている。
 そして文字の色は二つ。
 一つは、赤い、血のような文字。
 もう一つは、青い、薄墨のような文字。
 これらがばらばらに行き交うため肌は紫色に染められたかのように見え、もはや爪の先までこの世の生き物でない姿になってしまった。
 肌を蠢き続ける呪詛はじわじわと宿主の脳も犯し始めている。
 やみくもに、すべての生あるものを粉々に壊してしまいたい荒々しい衝動と、
 足のつま先から頭のてっぺんまで、狂おしく駆け巡りのたうつ、みだらな衝動。
 二つの欲が、身体の中で対立し、そして溶け合い、だんだんと山姥切国広としての意識が遠のいていくのを感じる。
 自分は、このまま、欲の塊になるのか。
 獣ですらない、禍々しい何かになり、世を乱すというのか。
 矢を受けた瞬間、悪しき予感はあった。
 だからこそ聖域を目指した。
 しかし、自分ひとりで出来ることはここまでだ。
「さむい・・・」
 滝の音が、何かを語りかけているけれど、もはや、聞く力も弱っている。
 全身の血管がどくどくと波打ち今にも破裂しそうだ。
 毛穴の一つ一つに針を刺すような小さな痛みが時折駆け抜ける。
 骨と言う骨がみしみしと悲鳴を上げ、身体の形が変わっていっているのではないかという不安が胸の鼓動をさらに早めてしまう。
「あつい・・・」
 がんがんと頭が痛み、視界もかすんできた。
「頃合い・・・か」
 歯を食いしばって最後の力を振り絞る。
 身を起こし、刀を支えに立ち上がった。
 常に身体を覆い隠してくれていた白布を片手でようようむしり取り、紅い夕陽に醜い姿を晒す。
 細切れになっていく意識の中、なんとか両足で地面を踏みしめ、鞘から刀を抜いた。
「・・・やはり、な」
 刀身は真っ黒に変色し、鋼が腐りきっていることが山姥切自身にもわかる。
「これなら、俺でも、出来る・・・」
 こんな俺でも。
 すっかり固まってしまったと思っていた頬が、笑みの形を作るのをふと不思議に感じ、それがまたおかしくて、また笑いがこみ上げてくる。
「・・・さあ、今こそ」
 今こそ。
 今だからこそ、出来る。
 柄を逆手に持ち、強く握りしめ、思いっきり後ろに引いた。
 腕も、背中も、身体の全てが今の姿勢を保つのは無理だと訴える。
 それでも。
「俺は、山姥切国広!!・・・ただの、写しだ!!」
 全身の力と体重をかけて、剣先を岸壁の、もっとも固いところを狙って突き立てる。
 ―――キイン・・・!
 耳障りな高音が、あたりを切り裂く。
 そして。
「ぐ・・・っ」
 山姥切国広の背中から心臓の真ん中にかけて、黒い刀身が貫いた。
「ぐはっ・・っ」
 身体の奥が、破裂する。
 口から、何か液体を吐き出したように思う。
 だけど、もう、それが何なのかを見る力はなかった。
 朦朧としたままなんとか、前に進む。
 あと一歩。
 たぶん、あと一歩進めば…。
 ふいに、地面が途切れ、両足ともども踏み外す。
 前のめりに倒れ、頭から逆さに落ちていく。

 ざん。

 氷のように冷たい水の針が、容赦なく全身を突き刺した。
 底の方から沸き上がる強い力が、山姥切を下へ下へと引きずり込む。
 しかし、そんな最中にも呪詛は体中を巡り、苛み続けていた。

「すまない・・・」
 唇の上まで、強い欲が覆い尽くす直前。
 一瞬だけ記憶がよぎる。
 鼻の奥にすっと滑り込む、香の薫り。
 あれは、伽羅と、言ったか…。
 目の奥に浮かぶのは、金の光。
 眩くて、強くて、激しくて。
 そして、暖かい。
「た・・・」
 ごふっと、肺の奥まで冷たい水が浸入する。
「あい・・・」
 ようよう紡げたのは、それだけだった。







             -つづく-




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