『ときを、かぞえる。』-11- 

2016, 04. 09 (Sat) 16:16

 今日はうす曇り・・・かな。
 外は暖かいようですね。
 桜の季節もあっという間に終わり…、潮干狩りグッズを手にした人たちが私の住まいの敷地を通り抜けていく…。
 最寄りの商店街の100均のお店に行くと、いちばん表に潮干狩りグッズを並べているあたり、地域性が出ていますね。
 近くの海から河口付近かけてが太古の昔からの大漁スポット・・・ではあるけれど、ここ最近は博多湾の漁業組合の人たちがお金を出して稚貝を撒いてくれていたからのよーと、言いたいが、おそらく誰の耳にも届かない。ゴールドラッシュのような熱狂ぶりです。
 ええと、建設調査のために土地を掘れば貝塚はたくさん出てきます、福岡。
 それだけ代々のの住人たちが貝をこよなく愛して食い続けた証拠です。
 実際、美味しいのですよ。身が締まって味が濃くて。
 その味が忘れられずに皆が掘るという(もちろん、両親も甥っ子たちも三月末に掘りまくった)、半ば依存症にもなる貝の恐ろしさよ。
 願わくば、皆さん、三センチ以下の貝はそっと海に戻してあげて・・・。
 
 さて。
 第十一話です。
 同人誌掲載のものは次の十二話でおしまい。
 続きを自力で…いや、今まで自力で書いておりましたが、とにかく頑張って先に進めねばですね。
 まだ事故のようなちゅうにしかこぎつけていない三十路男たちの話、まだまだ続きますので、何卒よろしくお願いします。
 ちなみに、森本のネーミングセンスはお母さん譲り・・・と思われます。
 似た者親子。

 ではでは、みなさん良い週末を。





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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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   『ときを、かぞえる。』-11-


「・・・あ、ああっ?なんだって?」
 ひっと、誰かが小さな悲鳴を上げた。・・・ような気がする。
「あの・・・。直に履いて靴擦れしないんですか?それに蒸れますよね、日本は湿度高いから特に。水虫とか、臭いとか、そういったのもあなたは大丈夫なんですか?もしかして、特異体質?」
「はあああ?」
 乱入男は肩を怒らせ、いきり立つ。
 パーツは悪くない顔立ちだがすさんだ生活を送ってきたのか、すでに崩れてきている。チンピラ風情と多くの人に煙たがられているだろうこの男が哀れにも感じたが、それ以前に森本達への言動は言語道断で、即刻立ち去ってほしいと思う気持ちが口を軽くする。
「丈夫な足をお持ちなんですね、俺なら無理です」
 そもそも、そのファッションが無理だ。
「ついでに面の皮の厚さと脳みその空っぽ具合にも感心しましたって、言っても構わないのよ?」
「ああっ?」
 更なる飛び入りを確認すると、そこには五十代くらいだろうか落ち着いた雰囲気の女性と、珠希が立っていた。
「母さん」
「叔母さま・・・、珠希」
 はじかれたように麗佳が立ち上がり、二人に向かって駆けだした。
「遅くなってごめんなさいね。森本は大丈夫なんでしょう」
「ええ、今のところは」
「このところ落ち着いていたから安心していたのだけど、気を抜いちゃだめね。まだ治療中かしら?」
「はい」
「ありがとう、麗佳」
 幼い子にするようにさらりと頬を撫でてねぎらった後、男と向き合う。
「こんにちは、森本の・・・、どなただったかしら。分家の分家の甥御さん」
「知ってるくせに、とぼけるなよ、おばはん」
「ごめんなさいね、覚えてないわ。だって、この年になると不快な記憶はどうしても残らなくて」
「後妻の分際で・・・」
「あら。この後妻の分際がこの長患いをお世話して以来、治療にかかわるすべてを払わせていただいてますけど、駆けつけてくれたってことは、これからお任せして良いってことかしら。ちなみにまだ死なないわよ、あの人しぶといから」
「なんていいぐさだ、この・・・」
「そんなことよりあなた。都内にマンションをたくさん持ってると触れ回っては女の子を引っかけてるそうね。しかもかなり具体的に物件の説明しているそうじゃない」
「う・・・」
「馬鹿ねえ。そんなたわごと信じるのは、場末のキャバクラ嬢くらいよ。もう銀座じゃもちきりで恥ずかしいったら」
「親父の後継者は俺なんだから、と、当然なんだよ!」
「そう言って、結婚にこぎつけようとしたのね。NM重工の取締役のお孫さんと」
「な・・・」
「どこぞのクラブでくすぶっているのを、うまく釣り上げたんですってね」
「そ・・・」
「気が大きくなったついでに銀座で自慢したのが失敗だったわね。速攻で報告が入ったわよ」
 二人の話には分からない点がいろいろあり首をひねっていると、そっと森本が耳打ちをした。母は手広く商いをしていて、そのうちの一つに夜の店が何軒かあると。
「実際のところは見栄を張りすぎて、借金だらけなのにね?」
「うそだうそだ、お前・・」
「そんな、嘘です!!」
 急に若い女性の声が割って入った。
「今度は誰だよ・・・」
 森本の呆れかえった呟きに、英知は内心大きくうなずく。
 物見を決め込む人々が幾人かいるなか、メタルフレームの眼鏡をした制服姿の若い女性がわなわなと震えていた。
「あ・・・。ごめんなさい、うちの医療事務の子です。・・・なるほどね。情報漏れるわけだわ・・・」
 麗佳がため息をつくと、「十分想定内ね」と森本の母は肩をすくめた。
「こんにちは。今の話のどれが嘘なのかしら?結婚のこと?それとも財産のこと?」
「ど、どちらもです。だって、だって、今度私の両親に会いたいって、ねえ・・・」
 黒々としたまっすぐな髪をひとまとめにした真面目そうな女性は相当動揺しているのか、ふらふらと森本達に向かって歩きだしたもののうまく前に進めない様子だ。
「そんなの知らねえよ。誰だよ、このブス」
「わー、すごいわ、ここまで振り切れてると」
 それまで見物を決め込んでいた珠希が、平坦な声で感想を告げる。
「・・・珠希ちゃん」
「はい、申し訳ございません、社長。どうぞ続けてください」
 軽く珠希をたしなめた後、森本の母は事務員の手を引き、長椅子に座らせる。
「とにかく財産に関しては真っ赤な嘘ね。彼はあなたにどんな物件を言っていたの?」
 屈んで目線を合わせ、優しく問うと、内通者はゆっくり震える手で数え始めた。
「あ、あの・・・、ベイカー代官山とか」
「それ、俺の」
 横から森本が挙手する。
「トワイライト汐留とか・・・」
「それも俺の・・・」
「ならフレイヤ麹町は・・・」
「あら、それは私のだわ」
 都内の主だった物件をさらにいくつか挙げるものの、森本親子は全て否定、詐欺男は顔をゆでだこのように真っ赤にさせていくばかりだ。
「でも、でも、じゃあ、プレシャスTLは・・・っ。あれなら・・・」
「川越えてお手軽っぽいし?」
「はいっ」
 藁にも縋る気持ちなのだろう、正直な返事が返ってくる。
「やっぱ、あそこを女の子に見せたんだね、純也さん」
 森本があきれ顔でため息をついた。
「実はさあ。うちの管理人たちが前から報告きてたんだよね。プレシャスとレジーナをうろつく男がいるって。いつも真っ赤なロードスターで女の子とっかえひっかえ連れてきて、なんか自慢してるようだって」
「あ・・・」
 そのうちの一人だったのだろう、長椅子の女性は口を半開きにしたまま固まっている。
「セキュリティーにも写ってるよ。でも、中に入れてもないのに、よく騙せたねえ」
「その点だけは、お母さんも感心したわ」
「だ、だ、だまれだまれ、女狐・・・っ」
「女狐上等。四十過ぎても中学生以下の物言いしかできない上に、今どきバブル臭ぷんぷんさせた業界人崩れに言われたくないわ」
 ああ、そういえばカタカナ職業の人を揶揄したコントがあればまさに目の前の男の風貌だ。例えばナントカ・コンサルタントとか、ナントカ・コーディネーターとか、ナントカ・プロデューサー?
 思い浮かべているうちに我慢ができなくなり、英知は吹き出した。




       -つづく。-


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