『ときを、かぞえる。』-10- 

2016, 04. 08 (Fri) 16:12

 低気圧が去り、天気が回復しました。
 結局、午前中いっぱい寝込んで終わった私の休日…。
 仕事はどうした。
 いえね。
 昨日から頭痛と眼精疲労のほかに喉が少し痛かったのです。
 今更風邪なんて・・・と心の中で否定しても、今季、インフルのAもBも席替えの度に隣の女の子からもらった甥っ子のことを思いだすと怖くなりまして、大人しく休養を取りました。
 久々に取り出したプロポリスとハチミツ、そして首の指圧。
 どれかが効いたのか、喉に関しては治った気がします。
 私の場合、喉に不快感を感じるときは首の上から痛みの場所を触れてみるとたいていコリのようなものがあって、これをしつこく揉むと血行が良くなるのか、今年は風邪をひかずに済みました。果たしてこの処置が良いのか悪いのか、素人なのでわかりませんが。

 さて。
 まだ少し同人誌掲載分が残っているので、今日もUPします。
 気が付いたら、けっこう長い連載になりそうな、『ときを、かぞえる。』。
 起承転結の二番目をようやく登ったところくらいです…。
 これでどうして、50ページ以内にまとまると思ったんだろう。
 いつも計算が合いません。
 理由はおそらく、女性陣が出張ってくるとページが延びるという、いつもの罠にはまったからでしょうね…。
 それと、今回のチンピラシーンは最初予定になかったのですよね。
 さらーっと数行で流すつもりが、書いてみたら長くなったという地獄。
 チンピラの容姿のモデルは、とある二人の俳優さんを足して割った感じかな…。

 ではでは、楽しんでいただけると幸いです。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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   『ときを、かぞえる。』-10-

「温さん、こらちです」
 エレベーターで最上階へ上がると、以前英知を診察してくれた女性の医師が正面の待合コーナーで待ち構えており、手招きする。森本が駆けだすのを、英知は少し距離を置いて見つめた。
「病室を変えました。今はちょっと手当てをしていますから、ここでお待ちください」
 背後の英知にちらりと視線を送って会釈をしてから、長椅子を指し示す。
「え、なに?麗佳ちゃん、それは重篤ってこと?」
 詰め寄る森本の腕をとって座らせた。
「いえ、そこまではないけれど、大事を取ってICUの最新設備で治療中です。ほんとのほんとに面会謝絶ってしたかったし」
「どういうこと?」
「そもそもの原因は、森本の分家の方々が警備の目をかいくぐって侵入して騒ぎたてたことだったみたいで・・・。しかも叔母さまが外出されている隙に」
 森本の声が低くなっていく。英知は迷った末に二人の傍らに立った。
「・・・それで?」
 廊下を行きかうスタッフたちは忙しそうだが緊急を要する気配はなく、また、英知たちを気にするそぶりもない。
「何事かまくし立てておじさまを相当怒らせたようです。容体が急変したのに驚いて、ナースコールもせずに逃げ出したとか・・・」
「は?」
「ナースステーションですぐに察知して駆けつけたので、手遅れと言う事態は免れました。子細を教えてくれたのは、お隣の部屋の患者様とご家族です」
「・・・後で、その方の名前教えて。お礼に伺うから」
「はい」
 冷静に言葉を口にするものの、彼はどこか上の空だ。
「証拠は残っています。うちの特別フロアの監視カメラを甘く見ていたみたいで、こっそり押し入るところも、逃げ出したのも鮮明に映っていたそうです。ただ、彼らの侵入を許してしまった点はごめんなさい。どうやら内部協力者がいるようなので、今、事務方が調査中です」
「・・・わかった。母さんは?」
「叔母さまとは連絡がつきました。珠希さんの運転で、もうすぐこちらに着くと思います。それから担当医によると急激な数値の変動がみられるけれど、ぎりぎり想定内で命に別条なしという診断です。とりあえずは」
「ぎりぎり・・・ね。まあ、年だし・・・」
「私としては大丈夫と言いたいけれど、こればかりは・・・。ごめんなさい」
「うん。わかってる。ありがとう。麗佳ちゃんも仕事中なのにごめんね」
「いえ・・・。そもそも私、日高さんの診療をした後は上がりの予定だったので」
 はっと息を飲んだ森本は、あわてて麗佳に頭を下げた。
「ますます、ごめん」
「・・・気にしないで下さい。だって私たち、身内でしょう?」
「うん。君が従妹で、よかった・・・」
 麗佳は何度か目を瞬かせながら、そっと森本の腕に手をかける。
「それは、私もです」
 細い指先が、儚げに見えた。
「おじさまの容態が好転しますように」
「・・・うん。ありがとう」
 森本と麗佳の作りだす静かな空間。
 それは聖域にも見えた。
「なんだよ、その女医とデキてたんだな、ゆたかぁ」
 突然、不快な声が割って入ってきた。
「ふっざけんじゃねえよ、なにが好転しますようにだよ」
 目を向けると、ひょろりとした風貌の男が下卑た笑いを浮かべていた。
「真昼間からイチャつきやがってさあ」
 わざと聞かせているだろうその大声に、スタッフが幾人か顔をのぞかせる。
「だいたいさあ、お前ら血ぃつながってねえじゃん。」
「あなた、もしかして・・・」
「麗佳ちゃん、いいから」
 二人が小声で話し合うのがますます気に食わないらしく、眉間にしわを寄せ「はっ、やっぱりな」と吐き捨てた。
「親父さんの容態が急変したって聞いてあわてて駆けつけたら、なんだよこれ」
「聞いた?いったい誰に」
「さあなあ」
 闖入者の名を欲しいままにしているその男のすべてに違和感を覚え、英知は思わず頭のつむじからつま先までじっくりと眺めてしまった上に、ある所がどうしても気になって目が離せない。
「森本さん、この人はどなたですか?」
 視線は囚われたまま、森本に尋ねた。
「あー。そうだなあ。父方の親戚?」
「なるほど・・・」
 尋ねておいて悪いが、やはり気になって仕方なく、上滑りな相槌を打つ。
「親戚じゃねえよ、お前身内じゃねえし!だいたいなんだよ、そのでっかいの。すっこんでな!」
 どうやら自分にターゲットを変えたらしい男が詰め寄ってくる。
睨みあげながら唾を飛ばして威嚇しているようだが、高めの声は裏返り、躾のなっていない犬が見境なく吠えるようなものだ。おそらくは、森本達より年上。四十代だろうか。親戚と言えども森本達への態度は許し難く、さっさとつまみ出したいと思った。
 それにしても。
「素足に革靴・・・。生で見たの初めてだ」
 ついに口から好奇心の塊がとび出てしまった。



       -つづく。-


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