『少女』-4-(刀剣乱舞 幕間編) 

2016, 01. 07 (Thu) 08:22

 今年最初の小説になります。
 お待たせしました。
 予想以上に長くなり…。
 いつものことですが、反省しています。

 年末からずっと片頭痛と胃腸の不具合に悩まされてなかなか進まず、歯がゆいばかりでしたが、なんとかここまでたどり着きました…。
 途中で水すら受け付けない状態になったので、本当にどうしようかと思った…。
 年に何度かこの状態がやってきますが、まさか年末年始に当たるとは。

 登場人物が多くて、しかも台詞がポンポン交わされて何が何だか…と思われるかもしれませんが、さらっと楽しんでいただければ嬉しいです。
 
 刀剣乱舞のゲームをやっていない人には何のことやら…という話でごめんなさい。
 キャラクターが多すぎて、私自身もお助けサイトと、ニトロプラスから購入した図録を見ながらこれを書いています…。
 ちなみに、参考にしたサイトはこちら。

 『刀剣乱舞攻略まとめwiki』 (← クリックしていただくと、おたすけサイトへ飛びます)


 次回は、次郎太刀主催の酒宴、言いたい放題のうたげとなります。
 そして、シリアスな話に突入しますのでどうぞよろしくお願いします。
 あ、作中に名前のみ登場のへしきり長谷部、福岡市博物館で公開中です。
 見に行かねばな…。
 今のところ、彼で話を書く機会はありませんが・・・。

 ではでは、刀剣乱舞の腐な話、お楽しみください。



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  現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
  飲んだくれ猟師と化け猫の話。
  楽しんで頂けたら幸いです。

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  『少女』-4-


「はいはい、そこまで」
 ぱんっと手を叩く音に、一同振り返る。
「燭台切・・・。遅い」
 ぼそっと加州が呟く横で、青江が両手をひろげて歓待した。
「やあ、光忠さんおかえり」
「お帰りも何も、きみたちさあ…」
 どこかのんびりとぼやきながらもいきなりつかつかと審神者に近寄ると、「失礼」と一言呟くなり胴を掴み、ひょいと肩に担ぎ上げた。
「な、な、何するのーっ、おろしなさい、光忠」
 俵のような扱いに、胸から下が逆さになった少女は燭台切の背中を小さなこぶしで必死になって叩く。
「やだね。即刻撤収だろう、これは」
「いーやーっ」
 陸揚げされたばかりの魚のようにぱたぱた跳ねて暴れるものの、不自然な体制でどうにもならない。
「ほらほら暴れない暴れない。落ちたら痛いよ?」
「落ちてもいい!!降りるのーっ」
「いや、ほんとに痛いからやめよ?」
「いいのーっ。おろして~っ」
 もはや子供返りの域に達しつつあった。
 普段は沈着冷静で戦の差配をするときには表情を動かさない少女が今、駄々をこねて大暴れしている。
 その信じられない光景に誰もがあっけにとられ、しかしこれなら騒動にも終止符が付くかと安どの空気が流れつつあったが、それもつかの間のことだった。
「さて弟たち。お前たちはここで何をしていたのかな?」
 涼やかな声色に、少年たちは顔色を変える。
「い、いち兄・・・」
 刀派唯一の太刀である一期一振が慈悲深い微笑をたたえて現れた。
「兄ちゃん、目が、目が笑ってない・・・」
「当たり前だろう。この騒動一部はお前たちに責任があるからな」
 ぴしりと指摘したのちに、とりあえず床に伸びていた鯰尾を小脇に抱えて、号令を出す。
「全員、とにかく僕について来なさい。いかなる理由があろうとも脱走不可」
「はあ・・・い・・・」
 しょんぼり肩を落とした短刀たちの後ろに、一期一振と一緒に帰着したらしい脇差の骨喰藤四郎がいつの間にか佇み、じっと仲間たちを見守っている。
「最強の布陣だ・・・」
 加州は感慨深げにため息をつく。
 あっという間に廊下は静かになった。
「ところで、近侍はどうした?」
 光忠の問いに、さっと、左右を青江と加州が固める。
「蜻蛉切はよもやこうなるとは思わず、熱心に刀装作りに励んでる」
 抱えた少女の重みを感じさせない足取りで、本丸に向けて進んだ。
 さすがに暴れ疲れたのか、抵抗する動きもだんだん小さくなってきている。
「あの人、真面目だもんなあ・・・。中断できるかな」
「狐を送ったから大丈夫じゃない?」
「ああ、あれはある意味破壊力あるねえ」
 刀剣たちの雑談が弾む中、じわりと潤んだ声が落ちる。
「ねえ、降ろしてってば・・・」
 燭台切はベストの背中をふるえる指先にぎゅっと握りこまれるのを感じた。
「・・・あのさあ、主」
「おろして」
「降ろすのはダメ」
 燭台切はきっぱりと断りながらも、少女の体に腕を差し入れて体勢を変え、横抱きにした。
 彼の金色の瞳が間近に見つめてくるのに耐えられず、審神者はふいと顔を俯かせた。
「主」
「・・・なに」
「あそこを開けるのはたぶん簡単だけど、そのあとのこと、ちゃんと考えた?」
「あとのことって・・・」
「山姥切はかなりの恥ずかしがりやさんだよ?いっつも隅っこにいて、目立たないようにってぼろっぼろの衣装着て」
「逆に悪目立ちしてるだろ、あれは」
「そこはまあ・・・。とりあえず置いといて」
 加州が茶々を入れるとちらりと微笑を返し、「ねえ、主」と柔らかな声で話を進める。
「あれほど必死になって自分を隠し続ける理由は解らないけれど、山姥切は誰にも何も見られたくないんだよ。それなのによりによって密か事が筒抜けだったなんて知ったらどうなると思う?」
「どうって・・・」
「あの子はきっと正気ではいられないと思うよ」
 あの子、と、燭台切は言う。
 その言葉の中に親しみと優しさを感じ、ぱんぱんに膨れ上がっていた審神者の憤りがしぼんでいく。
「・・・なら、どうしたらいいの」
「知らないふりをして、部屋から出てきたら、大事にならなくてよかったって言って喜んであげたらいいんじゃない?」
「しらないふり?」
「うん」
「山姥切が、あのバカ太刀に、あんな、あんな酷いことされたのに・・・?」
 羞恥と怒りが甦りかけたのを、軽く揺すっていなした。
「あれは、治療。深手を負って生死の境をさまよった山姥切が元通りになるための通過儀礼。・・・そう思おうよ」
 帰城した途端、五虎退の伝令で太郎太刀の暴走と審神者の混乱ぶりを知った時には、正直、一期一振たちと頭を抱えたが、今更どうしようもない。
「太郎太刀への仕置きは、そのあとでこっそり、やればいい」
 ここまで騒ぎを大きくした張本人をかばう気には、さすがになれない。
 少しは痛い目に遭うのも必要だろう。
「・・・わかった。そうする」
「ありがとう」
 少女のつむじに軽く唇をあて、一息つくとゆっくり床へと身をかがめた。
「ほら、あなたの近侍が迎えに来たよ」
 つま先が着くなり、審神者は毬が弾むように駆けだした。
 たん、と踏み切って跳んだ先には岩のように大きな男が待っている。
「蜻蛉切、とんぼぎり、とんぼぎり…っ」
 全速力の走りで力いっぱい飛び込む子供を、なんなく抱きとめた。
「おそい・・・」
 涙声の抗議が広い胸に沈む。
「は・・・。申し訳ありません」
「もう疲れた。帰りたい」
「はい」
 こんな時、蜻蛉切のどこか不器用で朴訥とした人柄が一番のよりどころとなるのだろう。
 ゆっくりと抱き上げると素直に身体を預けた。
「では、失礼する」
 仲間に軽く会釈をしたのち、奥へ向かって静かな足取りで進む槍の背中をため息交じりに見送った。
「思ったより早く保護者が来てくれて、良かったねえ」
「僕と蜻蛉切とでずいぶん態度が違うよね、主ってさ・・・」
「ふふ。やきもち?」
「妬くも何もね。まあ、役割は心得ているつもりだよ?」
「君って、意外と貧乏くじ引く方だよねえ」
「青江さんから言われると、なんかポジション固定な気分になるからやめて・・・」
「はあーっ・・・」
 和やかに会話を交わす二人の横で加州がへたり込んだ。
「終わった・・・」
 疲労困憊といった彼の上にお気楽な声が降りてくる。
「ご苦労様~。ね、慰労会やろうよ、慰労会」
 にやにや笑いながら大太刀がどぶろく片手に登場した。
「次郎さん、あんた丸投げっぱで今までどこに隠れて・・・」
「んー。ゲロゲロしてることになってたから、いちおうその辺でおとなしくして見守ってたよ?」
「・・・助けてくれても良かったんだけど・・・」
「ま、みっちゃん来てからあっという間に収まったから、万事めでたしじゃない?さすがやること早いわねー」
「お褒めに預かり光栄至極」
「あん、惚れちゃう~。ね、一発やらせて?」
「それは勘弁してください。僕はまだ死にたくないんで」
「ああん、いけず~。なら、加州はど?」
「いや、俺も勘弁」
「ひっどーい」
 女装していても大柄で腕力も相当な次郎太刀に二人は同時に抱き込まれ、背骨をきしませて息をのむ。
「次郎さん、狐が酒宴の支度が出来たと言ってますよ」
「あいよ!じゃあ、いこっか!!」
 青江の助け舟にほっとするのもつかの間、そのままずるずると廊下を引きずられて行く。
「今夜は眠らせないよ!!」
 その言葉通り慰労会出席者は次郎太刀の独壇場となり、翌朝にはほとんどの刀剣たちが仲良く二日酔いに沈んだ。

 そして。
 三日後に奥御殿から出てきた太郎太刀は、その瞬間から遠征に次ぐ遠征を命じられ、帰着時には必ず山姥切は出陣中で不在という念の入れようで、全く会うことが叶わなくなった。
 その処遇に、七夕の牽牛と織女の方がまだましなのではないかと刀剣たちは震え上がる。
「少女って、こええー」
 さもありなん。


   -おわり-


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