『ときを、かぞえる。』-4- 

2015, 10. 28 (Wed) 07:09

 昨日は福岡で久々の雨降りになりました。
 なので、ようやく窓と網戸とベランダの掃除をしました・・・。
 年明けまで住んでいたマンションのベランダは狭かったのでそれにすっかり慣れていたのか、今の家のベランダ掃除は意外と難航し、途中で投げ出したくなった…。
 洗剤使ってがっつりやったから、年末の大掃除は軽くできる…訳はないか。
 日ごろからこまめにやっていないからこうなるんだよ、と過去の私に説教しました。
 ほんとうに、どうしてこう、なんでもやっつけ仕事なんでしょうね。

 さて、『ときを、かぞえる。』第四話をお届けします。
 いかがでしょうか・・・?
 私は単なるイタコで、登場人物たちが好き勝手にやっているのを自動書記する・・・という状態なので、果たしてこれが読者に面白いのだろうかと不安を抱いたまま進めています。
 そんななか拍手や感想などいただけると、これでいいのかな、このまま進めていいんだよね?と少し、いえかなり勇気がわきます。
 私の、大風呂敷でまわりくどい話を読んでくださり、本当にありがとうございます。
 そして、拍手で励ましてくださる方にはなんとお礼を申せばよいのか…。
 今日も一日、頑張ります。

 
 
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   『ときを、かぞえる。』-4-



「プレシャス・TL…?」
「ほんとは、プレシャス・トオルだったんだけどねえ。さすがにそれじゃ恥ずかしいでしょ」
 くくくと、意味ありげな笑いを浮かべる姉の背中をぼんやりとしたまま追った。
 八階建てのようだが総戸数はそれほど多くない、どちらかというと小規模だけど清潔でエントランスは品よく、なんと管理人が常駐していた。 
「珠希さん、いらっしゃい。オーナーはお待ちかねだよ」
 自分とそう年の変わらない男が愛想よく話しかけてくる。
「今日、教室開く?」
 声を低めて問う珠季に、いたずらっぽく目を瞬かせ、同じく声を低めて答えた。
「あ、俺マジで山場だから今週は臨時休業。大丈夫だよ」
 ほっそりとした首に、緑色の絵の具がついている。
 よくよく見たら彼の履いているチノパンには様々な色が付着していた。
「ごめんなさいね。なるべく早くにカタつけるから。埋め合わせもいづれ」
「いえいえ、お構いなく。ああでも、この間のパンうまかった」
「明日差し入れするわ、ワインもつけて」
「うん、期待してる」
 親しげに会話を交わしたあと、二人は手を振りあい別れる。
「・・・管理人さん・・・だよな?」
 ソファセットを横切り、エレベーターに乗り込んだ。
 バッグから取り出したカードキーを差し込み小窓から現れたテンキーに素早く番号を打ち込むと、箱が静かに上がっていく。
「うん。でも絵描きなの。1階は彼の住まい兼アトリエでね。ちょっと絵画教室をやりながら管理人業務もしているのよ。突然旅に出たりしていたりいなかったりなのがたまにキズだけど、まあ、オーナーが最上階に住んでいるからあんまり問題ないみたい」
 あんなぽよっとした子だけど、どんよりとした絵を描いたりするのよと、とも付け加えた。
「ふうん」
「ちなみになんでこんなに親しいかというと、ここからそう遠くないところにある系列マンションに住んでいるからよ」
「は?」
「やっぱり知らなかったわね。あんたが海外に行っている間に私にも色々あって、引っ越したの。でもあっちに連れて行くと同居人が危険な目に合いそうだからこっちにしたってわけ」
「同居人って・・・」
 姉は、独りが好きだと公言してこの年まできたはずだ。
「ま、それはおいおい。まずはあんたのことよ」
 そう言ったところでちょうどエレベーターが止まる。
「ほら、行くわよ」
 扉が開くとそこはすでにプライベート空間らしく、内装から下の階層と一線を画していた。ロビーには適度にインテリアが飾ってあり、ソファも置いてある。そしてその先にはシンプルなドアが一つあった。
 姉弟でそれぞれかつかつと靴底を鳴らして歩いていると、ふいに扉が開いた。
 少しやせぎすで小柄な男が顔を出す。
「やあ、いらっしゃい」
 柔和な、ほほえみ。
 濡れたような黒い瞳は、ずっと、ずっと忘れられなかった。
「森本さん・・・」
 どうして、という言葉がまたこみあげてくる。
 十七年と二ヶ月、そして七日。
 もう十分大人になったはずなのに、自分はまた動けない。
「よく来たね。上がって」
 まるで、つい昨日別れたかのような親しげな笑みを呆然と見つめ返す事しかできなかった。


「ここは俺のだし、住人はみんな顔見知りだから安心して良いよ。まあご覧のとおり小さいマンションだからセキュリティが万全とは言い難いけど、とりあえず俺の部屋へはキーと暗証番号がないと昇って来られないから」
 八階は全て森本の住空間とオフィスらしい。
 基本的にはエレベーターに近い部屋で過ごしているが、ロビーの奥に隠れるように設置してある扉はいわゆる特別室で、お忍びでやってきた客のためにという設定で作られていた。セキュリティに興味を持っているらしい森本は警備会社と提携して簡単に入れない仕組みを開発して施したという。
「とりあえず、そこに入って。英知くんは入院している事になってるから」
「なってる?そんな事が出来るんですか?」
「うん。あの病院、俺の親戚筋だからどうとでもなるの。麗佳ちゃんって綺麗な女医さんに会っただろう?俺の従妹」
「あ・・・」
 人のつながりはわかった。
 だけど、なんとなく納得できないものもあり、首をかしげる。
「ま、それはおいおい。とにかく英知くんは寝て、食べなきゃね」
 こっちにおいで、と促され、のろのろと後に続いた。
 相変わらず、ひょこひょこと子供のような歩き方をする。
 そして、小さな背中。
 細い首筋。
 これが現実なのだと、とうてい信じられなかった。
 十七年と二ヶ月、そして七日。
 今日、こうして再会できた。
 もう、数えなくても良いのだろうか。


 ここは安全だから、安心して。
ゆっくり休むんだよ。
 そう森本に言われ、ベッドに横たわったものの。
「落ち着かない・・・」
 見た目はシンプルだが、おそらく木材ひとつ、シーツひとつとっても普段お目にかかれないような素材に違いないことをひしひしと感じるベッドと調度品の数々が配置された部屋の雰囲気に、英知はすっかりのまれていた。
 森本が多くの資産を所有していることはだいたいわかっている。
 だけどそもそも数値自体が中流家庭の英知にとって天文学的なもので想像することすら不可能のなところに、このマンションと調度品の数々。
 ますます夢と現実の境目が分からなくなっていく。
 彼のことを考えれば考えるほど目はますます冴えていくばかりで、とうとう思い切ってベッドから出ることにした。
 姉の用意したスウェットを着て扉に手をかける。
 特別室の外へ通じるドアは二つあった。
 廊下に面したセキュリティ付の厳重な二重扉か、温のプライベート空間に通じるドアか。
 いつでも来て良いよと言われていた事に甘えて、部屋を訪ねる。
 夜中の一時。
 本来なら、非常識な時間。
 だけど、書斎と教えられていた部屋のドアは少し開いていて光と紙をめくるかすかな音が廊下にもれていた。
 本棚が壁を覆う部屋の中に、複数のパソコンを立ち上げた大きめの机の前に座ってぽつんと書類を見ている森本の姿が目に入り、思わずノックした。
「やっばり、ねむれないか?」
 変わらない笑顔。
「ええ」
 だけど、大人として、距離はますます大きくなるばかりで。
「そうだよな、あんな目に遭ったら」
「いや、部屋が立派すぎて・・・」
 立派すぎるのは、森本温。
 あなただと言いそうになる。
「あれ?そっち?」
 くくく、と、喉を鳴らして笑われた。
「まあ、俺もあの部屋で寝たことないしなあ。見栄を張りまくったことは否めないし」
「え?」
「今、大体の状況を調査会社が送ってきてね。この様子だとあそこでなくて大丈夫そうだから、もうちょっと普通でここに近い部屋に移る?」
「・・・そうさせて頂けるとありがたいです」
 そもそも、ここへ辿り着くまで客室がいくつもあった。
 それぞれ寝室とトイレとバスルームが付属しており、まるでホテルのようだ。
 彼が言うには、時々、半分趣味で経営している飲食店の一時的な寮になったりもするらしい。
「じゃあ、リビングに一番近い部屋にしようか」
 この隣だよと、軽く肩をたたかれ、促される。
 ぴくりと、肩に電流が走ったかのようにわずかに震えてしまった。
「英知くん?」
「あ・・・。すみません、なんでもないです」
 その、軽く触られたことに内心かなり動揺している。
 指先一つ、触れてもらえたことなんて、いつ以来だろう。
 姉が家へ連れてきたその日から、小学生の自分を弟代わりにかわいがってくれた。
 でも、あの最後の日はそれどころでなくて・・・。
 指折り年月を数えようとして、途中でさすがに無理だと気付く。
 姉と、森本と、自分。
 三人の時間は長く続くものだと信じていたのだ。



       -つづく。-


   どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
  そこに、小話を添付しています。
  小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
  今回は、『すいかずら-蛍の恋-』です。
  戦時中の、恋物語。
  楽しんで頂けたら幸いです。

 一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
 随時オーダー受付中。

 これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。
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