『ときを、かぞえる。』-1-
2015, 10. 23 (Fri) 15:44
昨日は思いのほか疲れていて。
というか、朝の四時四十五分にこむら返りに襲われ、それがよう治らんまんま仕事へ行き、それをかばって動けば動くほど疲れがたまっていった気がします。
自転車のライトが急につかなくなったし、パソコンは何度トライしても立ち上がらないし、落ちるし。
・・・私、体内に電気系統をダメにする何かを持っているのでしょうか?
そういや、昼休み潰して挑んだ輪転機印刷も、途中でインク切れとか言って止まったっけ。
しかも、インクはまだ内蔵にたっぷり残っていることが判明し、輪転機様にからかわれたことが判明・・・。
舐められてる。
ちなみに、「輪転機」というキーワードにそれがどんな印刷をするものか思い浮かんだ方は同業者、または年齢的に私とお友達。
さすがにガリ版印刷はなかったですよ?
うん、たぶん…。
なんだっけな、前の仕事場で昔、「青焼き」というものが存在したというのは聞いたことがある。
とある飲み会で事務職大奥筆頭の方の若いころを幹部たちが懐かしみ、「彼女はそりゃあ綺麗で、高嶺の花で、青焼きは職人技だった…」と夢を見るように語ったのを今も忘れない。
話がそれました。
この数週間の間にたくさん素敵なBLを道場の師匠に借りて語るつもりでしたが、それより先に今回のJ庭39配布の同人誌を掲載したほうがここに来られる方には嬉しいのかしらと思い、そちらの作業を先にしたいと思います。
あと五回くらいの連載になると思います。
でも、それでようやく前半戦。
後半は肉づけしたりして今しばらく時間がかかるかと思います。
それと、先に刀剣乱舞の方を片付けようかと…。
あれ実は連作で、あと三篇くらいあるんです、話が。
いい加減書こう、書かねばと思っています。
でないと、私のちいさな脳みそがせっかく考えたネタを忘れてしまう…。
ゲームも、今がんがん商っていますがこの勢いがいつまで続くかわかりませんし。
あ、それと、明日パソコンをつなぎかえるのでシステムになじむのに少し時間がかかるかもしれません。
いや、ネットつなぎたさにむりやりめりめりやりそうな気もしますけどね。
そして、いい加減拍手御礼のSSも付け替えねばと、やらねばならぬこと山積です。
あれ?
また話がそれまくっている…。すみません~。
そういや、J庭40、懲りずに参加予定です。
まだ申込みしていないけれど、宿と飛行機の確保はした。
イベント終了後すぐに帰るのではなくて、一泊して翌日ゆっくり帰ることにします。
しかし、当日朝一便で上京するか、前日の夜入り前泊にするか悩んでいます。
何しろ連休中なので、職場的にはかなり不義理な状況でなるべく休みを取らない方向で行きたい…。
朝七時の飛行機っていつまでに空港についてりゃいいんだ…。
朝五時に起きて朝食食わずに出ればいいのかなー。
荷物をカートにするのやめりゃあ、早朝の住宅街走り抜けても迷惑にならないのかな。
タイトなスケジュール(私にしては)を試すか思案中です。
さて。
マンションオーナー・森本温の恋。
最初に色々かましていますが、どうか我慢強くお付き合いいただけると・・・。
そして、少しでも楽しんで下さると嬉しいです。
記事の一番下の『拍手』ボタンをクリックして頂くと小話をご覧になれます。
現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
飲んだくれ猟師と化け猫の話。
楽しんで頂けたら幸いです。
アクセスして下さったり、拍手やバナークリックで励まして下さる皆さんに感謝しています。
もしもよろしければ感想や要望など頂けると、本当に嬉しいです。

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『ときを、かぞえる。』-1-
人生は、いつだって思いも寄らない方向に転がっていく。
「ほら、今日からあんたがお世話になるマンションのオーナーよ。挨拶して」
いつでも高飛車な姉が、いつも通りに10センチ以上高い弟の後頭部をつかんで無理矢理下げさせた。
姉の横暴は物心ついた時から変わらないから気にならない。
飴色のフローリングと、スリッパを履いた己のつま先をじっと見つめる。
瞬きをしたいところだが、出来ない。
出来なかった。
きちんと呼吸しているかどうかも、怪しい。
「やあやあ、英知くん、久しぶりだねー。すっかり大人になってびっくりだよ」
びっくり、なんてもんじゃない。
革張りのソファに深々と収まり、呑気な声を掛けてくる、この男は。
「森本・・・さん」
森本、温。
姉・珠希の元彼。
それも、高校時代にほんの少し付き合っただけの。
「うん。俺、ずっとかわんないと思うけど、さすがに忘れられちゃったかなあ。二十年くらい逢ってないもんね~」
「十七年」
「ん?」
「十七年と、二ヶ月です」
十七年と二ヶ月。
正確には、十七年と二ヶ月、そして七日。
ずっと数え続けていた。
あの日を、取り戻したくて。
「やあ、えいちくん、こんにちは」
その人は、のんびりと玄関先のポーチに座っていた。
「・・・こんにちは」
森本温。
ここ最近、姉の珠希と付き合っていて、時々訪ねてくる。
姉が言うには、お金持ちで学力の高い高校に通っているらしいが、制服を着崩して石のタイルの上に直に座ってすっかり寛いでいる様からは想像がつかない。
「えいちくん、身体おっきいから、ランドセル窮屈そうだねー。今、身長いくつ?」
「160センチくらい・・・だと思います」
母を追い越したのでそのくらいだろうと昨夜家族で話したばかりだ。
「うわ、マジ?俺、168くらいで、もう成長止まったっぽいのに、そりゃないよー」
腹を抱えて、ケラケラと笑う。
人なつっこくて甘えた口調に無造作と無精すれすれに乱れた茶色い頭髪、そしてひょこひょこと定まらない動きが全体的に軽い男へ仕上げていた。
「・・・もったいない」
よく見たら顔立ちは随分整っているのに。
凄く、綺麗な瞳をしているのに。
「へ?」
「あ。なんでもないです」
右肩にかけていたランドセルを下ろして、中から鍵を取り出す。
「ねえちゃ・・・姉は、まだ帰ってきてないんですか?」
「いいや」
「え?」
「なんか怒らせたっぽくて、中に入れてくんないんだよ。だから、えいちくんを待ってたの」
よいしょ、と立ち上がり、制服についた土埃を雑に払う。
「入れてくれる?仲直りしにきたんだ」
「・・・はい」
鍵を開けてドアを開くと、にっこり笑って先を促された。
入ったところで、玄関には腕組みをして仁王立ちの珠希がいた。
「・・・なに勝手に連れて入ってんのよ」
そう言いながらも、姉は帰宅するなり風呂に入ったようで髪は念入りにブローしてうっすら化粧をしていた。
しかも、淡いピンクでフリルやレースのついた純情系少女漫画のコスプレみたいなワンピースを着ている。
「・・・何よ。言いたい事あるの」
「いいや」
そのワンピースは、週末に家族で出かけた折に父にねだって買って貰ったものだ。
『そうかそうか、珠希はこんな清楚な服が好きなのか。似合ってるぞ、うん』
そう言って鼻の下を伸ばす父と、海外出張が多く滅多に家にいない彼の前では猫を被っては色々せしめている姉を交互に見て、どっと疲れが増した。
母もキャリアとしてバリバリ働いているため、自分たち子供は自主性の名の下に放任されている。
中学受験の準備に忙しい自分は塾との往復で一日が終わる一方で、エスカレーター式の学校で暇をもてあましている珠希はいつのまにか夜遊びの味を覚えてしまった。
しかしうすうす気付いている母はともかく、娘に甘い夢を抱く父の目を欺き通すためのカモフラージュと思っていたそのワンピースに、別の使い道があろうとは予想だにしなかった。
「・・・女子って」
これだから怖いんだ。
最強とうたわれる肉食恐竜・ティラノサウルスだって珠希に比べたら可愛いもんだ。
「珠希、ピンクを着る事あるんだね。いつもとなんか印象違ってびっくりした」
心底感心した口ぶりに、森本が父同様ピンクとフリルに惑わされたことに、少し、いやかなりがっかりした。
「・・・なによ。似合わないって言いたいの?」
「ううん。まさか」
森本は三和土からゆっくり姉を見上げ、声を低めた。
「すっごく、可愛い」
「・・・っ」
陥落したのは森本なのか、姉なのか。
手を繋いでリビングへ向かう二人の背中を、これが話に聞く痴話喧嘩なのかとげんなりしながら見送った。
そして玄関からすぐの階段で二階に上がり、塾へ行く荷物をまとめたあと、保護者の同意が必要な書類がリビングにある事を思い出す。それは締め切りをとうに過ぎていて、今日提出しないとペナルティの通告が親へ行く事になっていた。
「やば・・・」
階段を駆け下りて、リビングへの扉に手を掛ける。
「姉ちゃんごめん、塾のプリント・・・」
邪魔者なのは解っていたから言い訳をしながら足を踏み入れると、信じられない光景が飛び込んできた。
いつも綺麗に配置されているはずのコットンリネン張りのソファセットが思わぬ方角に歪み、斜めに押し倒した森本の上に馬乗りになった姉はワンピースの裾から太股をむき出しにしている。
森本のカッターシャツの前は開き、下に着ているTシャツはまくり上げられて意外に白い肌と無花果のような色の胸の突起が目に焼き付いた。
「・・・なにやってんの、あんたら・・・」
声が、出たかどうか解らない。
だけど、目の前の二人の様子からそれが届いたのだとぼんやり思った。
「なにって・・・」
「・・・なかなおり?」
少し、かすれた森本の声の甘さに全身の血が一気に駆け巡り、沸騰しそうだ。
更に、姉が握り込んでいるものに気が付いて、頭の奧で何かがブチリと切れた。
「・・・ばっかじゃないの?」
ばかみたいに、珠希と森本は動かない。
「さいてい・・・」
保健体育の授業で男の人と女の人の違いと子供の作り方は習った。
くっつきたくなる、というのも聞いた。
でも、こんなのってない。
気持ち悪い。
なまなましくて、汚い。
頭ががんがんして、胸の辺りから沸き上がる吐き気にのど元を抑えた。
たけど。
珠希の指の間から覗くモノから目が離せない。
うっすら桃色に色づいて、不思議な形をしてるけれど。
混乱した中、そこだけ、とても綺麗に見えた。
なのにそれは。
「う・・・」
呻いたのは誰だったのか。
こくりと、唾を飲み下したその瞬間、背後から肩を掴まれた。
「お前たち、何をしている!!」
振り返るよりも先に英知は押しのけられ、飛びかからんばかりの勢いで突進する大人の背中を呆然と見つめた。
-つづく。-
どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
そこに、小話を添付しています。
小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
今回は、『すいかずら-蛍の恋-』です。
戦時中の、恋物語。
楽しんで頂けたら幸いです。
一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
随時オーダー受付中。
これからも何かご希望がありましたら、是非リクエストを拍手コメントかメールフォームでお願いします。
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自転車のライトが急につかなくなったし、パソコンは何度トライしても立ち上がらないし、落ちるし。
・・・私、体内に電気系統をダメにする何かを持っているのでしょうか?
そういや、昼休み潰して挑んだ輪転機印刷も、途中でインク切れとか言って止まったっけ。
しかも、インクはまだ内蔵にたっぷり残っていることが判明し、輪転機様にからかわれたことが判明・・・。
舐められてる。
ちなみに、「輪転機」というキーワードにそれがどんな印刷をするものか思い浮かんだ方は同業者、または年齢的に私とお友達。
さすがにガリ版印刷はなかったですよ?
うん、たぶん…。
なんだっけな、前の仕事場で昔、「青焼き」というものが存在したというのは聞いたことがある。
とある飲み会で事務職大奥筆頭の方の若いころを幹部たちが懐かしみ、「彼女はそりゃあ綺麗で、高嶺の花で、青焼きは職人技だった…」と夢を見るように語ったのを今も忘れない。
話がそれました。
この数週間の間にたくさん素敵なBLを道場の師匠に借りて語るつもりでしたが、それより先に今回のJ庭39配布の同人誌を掲載したほうがここに来られる方には嬉しいのかしらと思い、そちらの作業を先にしたいと思います。
あと五回くらいの連載になると思います。
でも、それでようやく前半戦。
後半は肉づけしたりして今しばらく時間がかかるかと思います。
それと、先に刀剣乱舞の方を片付けようかと…。
あれ実は連作で、あと三篇くらいあるんです、話が。
いい加減書こう、書かねばと思っています。
でないと、私のちいさな脳みそがせっかく考えたネタを忘れてしまう…。
ゲームも、今がんがん商っていますがこの勢いがいつまで続くかわかりませんし。
あ、それと、明日パソコンをつなぎかえるのでシステムになじむのに少し時間がかかるかもしれません。
いや、ネットつなぎたさにむりやりめりめりやりそうな気もしますけどね。
そして、いい加減拍手御礼のSSも付け替えねばと、やらねばならぬこと山積です。
あれ?
また話がそれまくっている…。すみません~。
そういや、J庭40、懲りずに参加予定です。
まだ申込みしていないけれど、宿と飛行機の確保はした。
イベント終了後すぐに帰るのではなくて、一泊して翌日ゆっくり帰ることにします。
しかし、当日朝一便で上京するか、前日の夜入り前泊にするか悩んでいます。
何しろ連休中なので、職場的にはかなり不義理な状況でなるべく休みを取らない方向で行きたい…。
朝七時の飛行機っていつまでに空港についてりゃいいんだ…。
朝五時に起きて朝食食わずに出ればいいのかなー。
荷物をカートにするのやめりゃあ、早朝の住宅街走り抜けても迷惑にならないのかな。
タイトなスケジュール(私にしては)を試すか思案中です。
さて。
マンションオーナー・森本温の恋。
最初に色々かましていますが、どうか我慢強くお付き合いいただけると・・・。
そして、少しでも楽しんで下さると嬉しいです。
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現在は、『睦み月』で『シゲルとミケ』シリーズです。
飲んだくれ猟師と化け猫の話。
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人生は、いつだって思いも寄らない方向に転がっていく。
「ほら、今日からあんたがお世話になるマンションのオーナーよ。挨拶して」
いつでも高飛車な姉が、いつも通りに10センチ以上高い弟の後頭部をつかんで無理矢理下げさせた。
姉の横暴は物心ついた時から変わらないから気にならない。
飴色のフローリングと、スリッパを履いた己のつま先をじっと見つめる。
瞬きをしたいところだが、出来ない。
出来なかった。
きちんと呼吸しているかどうかも、怪しい。
「やあやあ、英知くん、久しぶりだねー。すっかり大人になってびっくりだよ」
びっくり、なんてもんじゃない。
革張りのソファに深々と収まり、呑気な声を掛けてくる、この男は。
「森本・・・さん」
森本、温。
姉・珠希の元彼。
それも、高校時代にほんの少し付き合っただけの。
「うん。俺、ずっとかわんないと思うけど、さすがに忘れられちゃったかなあ。二十年くらい逢ってないもんね~」
「十七年」
「ん?」
「十七年と、二ヶ月です」
十七年と二ヶ月。
正確には、十七年と二ヶ月、そして七日。
ずっと数え続けていた。
あの日を、取り戻したくて。
「やあ、えいちくん、こんにちは」
その人は、のんびりと玄関先のポーチに座っていた。
「・・・こんにちは」
森本温。
ここ最近、姉の珠希と付き合っていて、時々訪ねてくる。
姉が言うには、お金持ちで学力の高い高校に通っているらしいが、制服を着崩して石のタイルの上に直に座ってすっかり寛いでいる様からは想像がつかない。
「えいちくん、身体おっきいから、ランドセル窮屈そうだねー。今、身長いくつ?」
「160センチくらい・・・だと思います」
母を追い越したのでそのくらいだろうと昨夜家族で話したばかりだ。
「うわ、マジ?俺、168くらいで、もう成長止まったっぽいのに、そりゃないよー」
腹を抱えて、ケラケラと笑う。
人なつっこくて甘えた口調に無造作と無精すれすれに乱れた茶色い頭髪、そしてひょこひょこと定まらない動きが全体的に軽い男へ仕上げていた。
「・・・もったいない」
よく見たら顔立ちは随分整っているのに。
凄く、綺麗な瞳をしているのに。
「へ?」
「あ。なんでもないです」
右肩にかけていたランドセルを下ろして、中から鍵を取り出す。
「ねえちゃ・・・姉は、まだ帰ってきてないんですか?」
「いいや」
「え?」
「なんか怒らせたっぽくて、中に入れてくんないんだよ。だから、えいちくんを待ってたの」
よいしょ、と立ち上がり、制服についた土埃を雑に払う。
「入れてくれる?仲直りしにきたんだ」
「・・・はい」
鍵を開けてドアを開くと、にっこり笑って先を促された。
入ったところで、玄関には腕組みをして仁王立ちの珠希がいた。
「・・・なに勝手に連れて入ってんのよ」
そう言いながらも、姉は帰宅するなり風呂に入ったようで髪は念入りにブローしてうっすら化粧をしていた。
しかも、淡いピンクでフリルやレースのついた純情系少女漫画のコスプレみたいなワンピースを着ている。
「・・・何よ。言いたい事あるの」
「いいや」
そのワンピースは、週末に家族で出かけた折に父にねだって買って貰ったものだ。
『そうかそうか、珠希はこんな清楚な服が好きなのか。似合ってるぞ、うん』
そう言って鼻の下を伸ばす父と、海外出張が多く滅多に家にいない彼の前では猫を被っては色々せしめている姉を交互に見て、どっと疲れが増した。
母もキャリアとしてバリバリ働いているため、自分たち子供は自主性の名の下に放任されている。
中学受験の準備に忙しい自分は塾との往復で一日が終わる一方で、エスカレーター式の学校で暇をもてあましている珠希はいつのまにか夜遊びの味を覚えてしまった。
しかしうすうす気付いている母はともかく、娘に甘い夢を抱く父の目を欺き通すためのカモフラージュと思っていたそのワンピースに、別の使い道があろうとは予想だにしなかった。
「・・・女子って」
これだから怖いんだ。
最強とうたわれる肉食恐竜・ティラノサウルスだって珠希に比べたら可愛いもんだ。
「珠希、ピンクを着る事あるんだね。いつもとなんか印象違ってびっくりした」
心底感心した口ぶりに、森本が父同様ピンクとフリルに惑わされたことに、少し、いやかなりがっかりした。
「・・・なによ。似合わないって言いたいの?」
「ううん。まさか」
森本は三和土からゆっくり姉を見上げ、声を低めた。
「すっごく、可愛い」
「・・・っ」
陥落したのは森本なのか、姉なのか。
手を繋いでリビングへ向かう二人の背中を、これが話に聞く痴話喧嘩なのかとげんなりしながら見送った。
そして玄関からすぐの階段で二階に上がり、塾へ行く荷物をまとめたあと、保護者の同意が必要な書類がリビングにある事を思い出す。それは締め切りをとうに過ぎていて、今日提出しないとペナルティの通告が親へ行く事になっていた。
「やば・・・」
階段を駆け下りて、リビングへの扉に手を掛ける。
「姉ちゃんごめん、塾のプリント・・・」
邪魔者なのは解っていたから言い訳をしながら足を踏み入れると、信じられない光景が飛び込んできた。
いつも綺麗に配置されているはずのコットンリネン張りのソファセットが思わぬ方角に歪み、斜めに押し倒した森本の上に馬乗りになった姉はワンピースの裾から太股をむき出しにしている。
森本のカッターシャツの前は開き、下に着ているTシャツはまくり上げられて意外に白い肌と無花果のような色の胸の突起が目に焼き付いた。
「・・・なにやってんの、あんたら・・・」
声が、出たかどうか解らない。
だけど、目の前の二人の様子からそれが届いたのだとぼんやり思った。
「なにって・・・」
「・・・なかなおり?」
少し、かすれた森本の声の甘さに全身の血が一気に駆け巡り、沸騰しそうだ。
更に、姉が握り込んでいるものに気が付いて、頭の奧で何かがブチリと切れた。
「・・・ばっかじゃないの?」
ばかみたいに、珠希と森本は動かない。
「さいてい・・・」
保健体育の授業で男の人と女の人の違いと子供の作り方は習った。
くっつきたくなる、というのも聞いた。
でも、こんなのってない。
気持ち悪い。
なまなましくて、汚い。
頭ががんがんして、胸の辺りから沸き上がる吐き気にのど元を抑えた。
たけど。
珠希の指の間から覗くモノから目が離せない。
うっすら桃色に色づいて、不思議な形をしてるけれど。
混乱した中、そこだけ、とても綺麗に見えた。
なのにそれは。
「う・・・」
呻いたのは誰だったのか。
こくりと、唾を飲み下したその瞬間、背後から肩を掴まれた。
「お前たち、何をしている!!」
振り返るよりも先に英知は押しのけられ、飛びかからんばかりの勢いで突進する大人の背中を呆然と見つめた。
-つづく。-
どの日付のものでも構いませんので、それぞれの記事の下の『拍手』ボタンをクリックすると、おそらく『拍手御礼』というページが展開されるかと思います。
そこに、小話を添付しています。
小話は、『拍手御礼』に1話のみ。
今回は、『すいかずら-蛍の恋-』です。
戦時中の、恋物語。
楽しんで頂けたら幸いです。
一応、これからも拍手用小話を月に一度書き換える予定です。
随時オーダー受付中。
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